先日、移動時に時間に余裕ができたので
師匠のお店へお邪魔させて頂く事に。
梅田のビジネス街のド真ん中にカットイスが2脚。
戦前生まれの私の師匠のお店は、都会の中にある
昔ながらのカットサロンで、常連さん達の憩いの場です。
近況報告も一段落した時に師匠の口から
『時間あるんやったら髪の毛切ってくれるか?』
と・・・。
技術職の方は御存知かと思いますが
自分の師匠に腕前を披露するのは、本当に色々な意味で
緊張の連続です。
しかも修業時代は、お察しの通りできの良い弟子では
ありませんでしたので、過去の苦い思い出が脳裏をよぎります。
しかも・・・
『道具出すの大変やろうからオレの使い。』
と、修業時代にはあり得ないオマケ付きです。
職人と呼ばれる師匠が、自分の道具を貸すなんて・・・。
初めて師匠のハサミを貸して頂き、イザ!師匠をカットです。
修業時代は
『だから、ソコは・・・』
とか
『何べん言うたら、わかるんや!!!』
などなど、ご指導頂いたものです。
しかし、この日の師匠。
カット中もシェービング中もシャンプー中も
目を閉じて、一切口を開こうとしません。
全ての施術を無事終えたのですが
弟子としては、えも言われぬ緊張感が店内を包みます。
そして
『ありがとうございました。
そろそろ時間なんで、失礼させて頂きます。』
と、店を出ようとすると・・・
『ちょっとはマシになったやないか。まぁ頑張れ。』
と、背中を向けて一言。
普段から口数の少ない職人気質の師匠からの
思いもよらない一言に
『あぁ、この人の弟子で本当に良かった。』
と、改めて実感しました。
もう還暦も過ぎた私の師匠ですが
いつまでも生涯現役を貫いて頂ければと思います。
不出来な弟子で散々、迷惑もかけましたが
いずれ外出が困難になった時に、師匠に教えて頂いた技術を
訪問理美容という形で、思いっきり恩返しを
させて頂ければと、改めて心に誓った
残暑の厳しい梅田での出来事なのでした。